肥前吉田焼産地の拠点、窯元会館リノベーションプロジェクト

text = ハマノユリコ

肥前吉田焼窯元会館

嬉野の魅力を体感できる場所

佐賀県嬉野市、吉田皿屋に点在する窯元エリアの拠点・肥前吉田焼窯元会館が、2019年1月26日、リニューアルオープンしました。

当日行われたメディア発表とオープニングの記念式典では、「開放感のある空間で嬉野の魅力を体感できる場所」として期待を寄せる声が多く、3年目となった産地活性化事業の集大成であることを感じさせます。

振り返れば、2016年度に初めて開催した「肥前吉田焼デザインコンペティション」で、外部デザイナーとの商品開発の取り組みに挑戦。老舗やきもの商社の倉庫からお宝を探す「吉田皿屋トレジャーハンティング」など新企画もスタートしました。

2017年度には「デザインスクール」を開講し、産地とクリエイターの関係を強化していきます。一方で、製造過程でどうしても生まれてしまうB品を各窯元で直販する「えくぼとほくろ」と工房見学の取り組みが、吉田を訪れるお客様への付加価値として話題を呼ぶようになりました。

そして、2018年度、満を持しての肥前吉田焼窯元会館のリニューアル計画を実行。
さて、どんなふうに変貌を遂げたのか? ご紹介していきたいと思います。

 

肥前吉田焼窯元会館

おもてなしのティースタンド

今回、外観には手を入れていないため、外から見ただけでは変わった感が伝わりにくいのですが、これまでの窯元会館を知っている方なら、エントランスに一歩足を踏み入れたとき、きっと「おおーっ」と声を出したくなるのではないでしょうか。

まず目に入ってくるカフェのようなカウンター。窯場でやきものを並べて乾燥させたり運搬に用いる皿板を再利用して制作しました。ところどころに窯元名を示す焼印があるのもご愛嬌。やきもの産地らしい風景が目に浮かびます。

壁面を飾る装飾にも、窯道具のひとつであるハマを貼り付けアートのようなビジュアルに。廃材利用とは思えない存在感です。

さらなる見所は、天井から吊り下げられたペンダントライトです。見覚えのある形状に、お気付きの方もいることでしょう。
土瓶や、丼、カップなど、各窯元の既存商品をリメイクして特別に制作した照明をインテリアとして取り入れました。

来館者のアイキャッチとなるこのカウンターは、レジカウンターとしてはもちろん、嬉野茶やスイーツを提供するティースタンドの機能も備えています。

[ 各窯元の特色を生かしたペンダントライト ]

 

肥前吉田焼窯元会館

体験スペースとショールームを一体化

これまであったショールーム入り口の自動ドアを取り払い、会館のエントランスを入ってすぐに見渡せる開放的で明るい空間設計。

窓際にはテーブル席を設け、これまで会館の奥にあった「やきもの体験室」の機能を移設しました。
実際に新しいスペースで絵付け体験をしていただいたお客様にも、「外の景色を見ながら、明るくきれいな空間で楽しめるので気持ちが良いです」と好感触でした。

今回のリニューアルに合わせ、これまでの絵筆を使った染付のほかにも、器に転写紙で柄を写し取る「銅板転写」や「スタンプ」での絵付けなどバリエーションを増やし、よりカジュアルに肥前吉田焼らしいやきものづくりを体験をできるよう工夫しています。

ショールームでお買い物をしているお客様も、体験している様子を覗き込んだりと興味津々。他の人が作っているのを見るだけでも楽しいものですよね。

[やきもの体験の詳細はこちら]

 

売り場には、各窯元の商品のほか、デザインコンペティションで商品化されたアイテムや、「えくぼとほくろ」のコーナーも。
お気に入りの窯元を見つけたら、嬉野茶を片手にぶらりと窯元巡りもおすすめです。
工房見学の予約や、各窯元を巡る相談にも乗ってもらえます。

肥前吉田焼窯元会館

場の変化、人の変化が生みだす、コトの変化

展示していた商品を片付け、大掃除をして、床を剥がし、壁を剥がし、ペンキを塗って、壁紙を貼って・・・。

12月中旬の着工から、お正月も返上して窯元スタッフや関係者によるDIYに頼りながら作業を進めてきた窯元会館のリノベーション。

プロジェクトの中心的存在として大きく関わっているのが、3年間、産地活性化事業をサポートしてきた、株式会社オープン・エーの大我さやかさんです。

「肥前吉田焼はこの3年間で、いろんな変化がありました。初めに吉田皿屋マップをつくったとき、歩いて回れる産地のコンパクトさと、職人の人柄、風景の魅力に気がつきました。

産地見学会、えくぼとほくろ、トレジャーハンティングなど、窯元を訪ねる接点を増やすごとに、お客さまが徐々に増え、観光コンテンツとして取り上げるメディアも増え、産地全体がオープンな空気になりつつあります。

その玄関口である窯元会館のリノベーションでは、空間デザインだけでなく、産地をもっと楽しんでいただけるコンテンツの強化に力を入れました。自分たちでできることを一つ一つ積み上げてきた結果が、この3年間の変化だと思っています。小さな産地だからこそ、職人と触れ合い、人のつながりが生まれていく産地になると思っています」

廃材や窯道具などを最大限利用し、産地の人材を活用したローコストリノベーションで生まれ変わった肥前吉田焼窯元会館
手作りだからこその愛着のある空間、やきものの産地らしさ、肥前吉田焼らしさを大切にした空間に仕上がったのではないでしょうか。

迎え入れる場所が綺麗に整備されることによって、訪れる人の気持ちや見方が変わり、もてなす側の意識も高まることが期待されます。

場の変化、人の変化が生みだす、コトの変化。

これからの肥前吉田焼産地が生み出していくコトに、注目です。