製造工程
PROCESS

ひとつの焼き物が出来上がるまでには、数えきれないほどの職人の手が関わっています。陶土屋、型屋、生地屋、窯元、その他にも上絵付けや茶こしなどの細かいパーツをつくる職人たち、生地と呼ばれるうつわの素地のつくり方も、そのデザインによって変わってきます。その製造工程を動画でご紹介します。
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原型

つくりたい製品の原型をつくります。最近では、3D-CGデータや切削機などを活用して、より自由にスピーディーに新しいデザインを生み出すことも可能です。原型は、乾燥や焼成によって生地が11〜13%縮むため、予め収縮率を計算して制作します。

石膏型(マスターピース)

原型ができたら、捨て型(見本型)→ケース型→使用型(量産型)と、いくつもの試作型をつくって、ようやく量産型ができます。試作型をつくる度に、生地を焼いてその精度を確認していく、手間のかかる工程です。工程によって使われる石膏の種類も異なります。

機械ろくろ

石膏型を回転させながら鉄製ヘラで生地を削ることで成形する方法です。主に皿、カップ、碗類などの円形の器に向いています。完全に機械化されて削るものと、回転する生地を職人の手で削るものと二種類あります。うつわの底面からへりにかけて、生地の厚みを微妙に調整しながら削る作業は、見た目以上に技術が必要です。収縮によって形状が変化しないよう、生地の厚みで調整するためです。

排泥鋳込

泥漿(でいしょう)※を石膏型に流し込む成形方法です。石膏は吸水性があるため、時間の経過とともに石膏型の内側に一定厚で固まる原理で成型します。適度な厚みになってから泥漿を排出し、生地をある程度乾燥させ、型から外します。主に、花瓶や急須など開口部に向け窄まった中空の複雑な形状の量産に使われます。
※泥漿とは流し込みが可能な流動性のある粘土

圧力鋳込

排泥鋳込みと同様に石膏の吸水性を利用して成型する方法です。泥漿(でいしょう)※に圧力をかけて石膏型に鋳込むため、生地が締まり歪みのリスクも少ないのが特徴です。一般的には上下に割れた雌型の石膏型を使い、主に変形皿の量産などに用いられます。
※泥漿とは流し込みが可能な流動性のある粘土

素焼き

乾燥後に仕上げが済んだ生地を、8~10時間かけて900~920℃で焼成します。以降の工程に必要な吸水性と強度を付けます。また、不純物を燃焼、除去します。

染付(手書き)

酸化コバルトを主成分とする「呉須(ごす)」という絵具を使って、素焼きした生地に絵付けをします。線を引く「線引き」や線の中に色を塗る「濃み(だみ)」、呉須を付けた筆の先だけを水につけてぼかす「付け濃み」など、技法も様々です。

転写

絵柄を陶磁器用の特殊シールで制作し、一度素焼きした生地に貼ります。十分に乾燥させた後、もう一度素焼きをしてシールのカバーコートを焼失させ、絵具が素焼き生地に定着します。手描きよりも生産性が高いため量産向きです。

釉掛け

本焼き焼成前に釉薬(うわぐすり)を施します。釉薬で生地に被膜を作ることで本焼き焼成の際に釉薬が溶けてガラス化。乾き具合や被膜を均一にするため、必ず手作業で行われます。

本焼成

施釉のあと、12~14時間かけて1300℃で焼成します。吉田焼では、還元焼成(酸欠状態で焼き上げること)を行います。釉薬や絵具の発色、光沢に大きな影響を与える最も重要な工程です。染付も釉薬もすべて焼成の際の化学反応によって、発色や光沢が現れるため、時には想像以上の作品が生まれることも。

上絵(赤絵・金彩)

「赤絵」「色絵」「錦手」ともいい、金彩なども上絵の一種です。本焼成した焼き物に、鮮やかで多様な上絵具で絵付けを施した後、焼成します。釉薬の層の上にあるので上絵付けと呼び、下絵との重なり合いで奥行感を生み出します。

上絵転写

下絵転写と同じように特殊シールを作成して本焼き焼成した焼き物に貼ります。十分に乾燥させた後、焼成してシールのカバーコートを焼失させることで、絵具が磁器表面に定着します。

上絵本焼成

上絵を施した磁器を、電気窯にて本焼成より低い800℃前後で焼成します。焼成温度の低い赤や金色は、釉掛けした磁器に上絵を施し、低温で再度焼くことによって、その鮮やかさを生み出します。